やさしい日本語がその一手段として役立つ可能性に 今後も注目したい

最初から難しい敬語を使わず、「です・ます」など、シンプルでも十分ていねいな言葉で話すことも、やさしい日本語のポイントです。

「やさしい日本語」普及の目的は、外国人の情報入手やコミュニケーションを円滑にすることにある。そのことは、外国人だけでなく、共に暮らす日本人のためにもなる。たとえば、情報の行き違いやコミュニケーションのすれ違いによる生活上・仕事上のトラブルを避けることができる。また、地域や職場などでより活躍してもらえるようになる。さらには、互いに異なる文化を知り、交流を楽しむこともできる。つまり、マイナス面を減らす効果に加え、プラス面を増やす効果も期待できる。

本ガイドラインは、出入国在留管理庁と文化庁が、共生社会実現に向けたやさしい日本語の活用を促進するため、学識有識者、地方自治体、外国人を支援する団体の関係者等からなる「在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインに関する有識者会議」を開催し作成しました。

またそれ以外にも、やさしい日本語の使用が日本人自身に与えるメリットはある。それは、やさしい日本語を使えば、日本人も言葉を理解しやすくなることである。

日本に住む外国人が増え、その国籍も多様化する中で、日本に住む外国人に情報を伝えたいときに、多言語で翻訳・通訳するほか、やさしい日本語を活用することが有効です。やさしい日本語を使うことで、日本に住む外国人にもしっかりと国や地方公共団体が発信する情報が届くようになることを目指しています。

やさしい日本語では、そのまま意味を表す「和語」をできるだけ使います。人を「招集する」は「人を集める」、匂いを「消臭する」は「匂いを消す」といえば、簡単にわかります。

そのように「やさしい日本語」を基本に置くことで、正しい外国語の表現にもつながっていきます。

やさしい日本語で話す一番の心得は、「ハサミの法則」です。はっきり言う、さいごまで言う、みじかく言う、の最初の文字をとって、「ハサミ」です。

「ざあざあ降る」は「たくさん降っている」、「しとしと降る」は「ずっと、少しずつ降っている」の方がわかりやすいでしょう。掃除をするなら、「ピカピカにする」「ツルツルにする」は、「きれいにする」で十分です。やさしい日本語ではオノマトペは使わないようにすることが鉄則です。

前述の図表2のガイドラインのうち、書き言葉に主な焦点をあてた①には、やさしい日本語を作るための3つのステップが載っている(図表4a)。そのステップ1は「日本人にわかりやすい文章」を作ることである。具体的には「情報を整理する」「文をわかりやすくする」「外来語に気を付ける」などのポイントがある。

今、期待を集めている「機械翻訳」においても、いったん分かりやすい日本語に直してから外国語に訳した方が意味の通る訳文になります。「やさしい日本語」は、そのような効果も期待されます。

したがって、これらのような日本語の書き方・話し方をすれば、日本人にも情報が伝わりやすくなるだろう。また、情報を出す側にとっては、やさしい日本語を書こう・話そうとする過程で、情報を整理できるメリットもある(注6)。

やさしい日本語とは、日本語を母語としない外国人など、日本語のコミュニケーションに何らかの困難を抱える人のために、語彙や文法などを調整した日本語のことです。

外国人・日本人を問わず多様な人々が情報を的確に伝え合い、コミュニケーションし合えることは、誰もが暮らしやすい社会の実現につながる。やさしい日本語がその一手段として役立つ可能性に、今後も注目したい。

「腕を上げる」と言う言葉は、本当に腕を上げることだけでなく、「上手になる」という意味があります。同じように「口が固い」は「秘密をいつも守る」、「首が座る」は「赤ちゃんの首がしっかりしてくる」という意味があります。このように文字通りでない、別の意味のある言い方を「慣用句」といいます。慣用句は、かんたんな言葉を組み合わせてとても豊かな表現ができます。しかしこれも外国人にはとてもわかりにくい言い方です。やさしい日本語では、慣用句を使わないようにします。

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