ネット 誹謗中傷 法改正
「ネット上であっても、ひどい悪口を言えば責任が問われるという意識が広がってほしい」。タレントでアパレル会社社長を務める川崎希さん(35)は、改正法の施行を前にこう願う。
身の危険を感じ、18年頃、発信者の特定に向けて動き出した。無数にあった投稿から特に悪質な書き込みを選び、掲示板の運営者に発信記録の開示を求めた。その情報をもとに、プロバイダー(ネット接続業者)にさらに詳しい発信者の情報を請求した。
改正法の施行には、「手続きが早まれば請求に踏み出せる人が増え、ネット上の中傷が減ることにもつながるはず」と期待している。
プロバイダ責任制限法が制定された当初、この法律が想定していた「特定電気通信」は当時流行していたインターネット掲示板のような、ログイン不要で書き込みを行えるサービスでした。誹謗中傷やプライバシーの侵害と判断される投稿が行われる舞台が、インターネット掲示板や個人のブログなどに集中していた時代です。
②発信者情報の開示というのは、インターネット上で名誉毀損やプライバシー侵害を受けた場合に、その投稿等をした者(発信者)を特定するということです。
もし自社での対応が難しいとわかった場合には、インターネット関連に強い弁護士に、早めに相談することをお勧めします。
ネットトラブルの法的問題に詳しい清水陽平弁護士は「特定までの期間が2、3か月早まることが予想される。時間がかかるという理由で手続きをあきらめていた被害者も多く、被害救済につながる」と指摘する。
だが、ネット上での中傷に関する被害相談の増加や、20年に女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が自殺した問題を受け、制度見直しの議論が加速。同法が改正され、10月1日以降、開示請求は1回で済むようになる。
インターネットは世界のどこからでも閲覧可能であり、一部のSNSは拡散のスピードも速いため、いちどネット上に誹謗中傷やプライバシーを侵害するような投稿が行われた場合、対処もスピード感を持って行わなければいけません。
SNSを利用する場合には、最初にアクセスプロバイダを通じてインターネットに接続し、次にコンテンツプロバイダを介してコメントの投稿を行います。法改正前には、これら2つのプロバイダに対してそれぞれ情報開示請求をしなければならず、場合によってはプロバイダ側が請求に応じないケースもありました。
現在のプロバイダー責任制限法では、被害者はSNSやウェブサイトの運営事業者から発信者のIPアドレス(ネット上の住所)の開示を受け、さらにプロバイダーに対して氏名や住所の請求を行うため、通常、2回の裁判手続きが必要だ。特定するまで1年近くかかることもあった。
川崎さんは2009年、アイドルグループ「AKB48」を卒業した後、会社を設立。結婚し、子どもにも恵まれ、ブログやSNSで日々の生活を発信していた。だが、注目の高まりとともに、ネットの掲示板で悪質な投稿を目にするようになった。
今回の改正プロバイダ責任制限法は、誹謗中傷の被害者の保護を最大の目的にしています。今後はプロバイダの情報開示がスムーズに行われ、裁判手続きが簡略化されることで、SNSなどインターネットをめぐるトラブルの早期解決が期待されます。
2022年10月1日より、改正プロバイダ責任制限法が施行され、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害に対し、被害者救済を円滑に行うため、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。
誰もがインターネットを使って自分の意見を自由に発信できることは良い事ですが、それを悪用して他人を攻撃する人がいるのも事実。「表現の自由」や「言論の自由」を尊重しながらの法整備は難しい問題でもありますが、今回の改正によって問題解決に一歩踏み出せる方が増えることを願います。